●四方田犬彦著『歳月の鉛』/工作舎/2009年5月発行
自伝的エッセイ『ハイスクール1968』の続編ともいうべき本書は、四方田犬彦の大学・大学院時代の回想とその時期に書き継がれていた「ノオト」からの抜粋が収められている。四方田の愛読者でなければ手にとることもない書物といえそうだが、それにしても七〇年代に彼が在籍していた東京大学教養学部文科三類、文学部宗教史宗教学科、人文系大学院比較文化比較文学専攻の修士課程には、さすがに錚々たる顔ぶれの教授陣、学生たちが集まっていたのだなぁとあらためて感心する。 追想の対象となっている教授陣は、由良君美をはじめ丸山圭三郎、小泉文夫、柳川啓一、蓮實重彦、佐伯彰一……。学友としては中退者を含めて、玉木正之、金子勝、島田裕巳、中沢新一、松浦寿輝のほか、上級生として植島啓司、中原俊らの名前が登場する。 陸続と書物を刊行し続ける四方田の若き日の思索や行動の跡を辿ることで、彼の批評スタイルのバックボーンや問題意識の源泉を理解する一助にはなる。ただ、蓮實や中沢、松浦らかつての恩師や学友に対して皮肉っぽい言辞を投げかけながら回想を綴る著者の口吻にはいささか後味の悪さも感じてしまった。
by syunpo
| 2009-07-14 19:43
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