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言葉と座標〜『学ぶこと 思うこと』

●加藤周一著『学ぶこと 思うこと』/岩波書店/2003年1月発行

言葉と座標〜『学ぶこと 思うこと』_b0072887_20145239.jpg 加藤周一は岩波書店からたくさんの著作を刊行した。小冊子のシリーズ《岩波ブックレット》の一冊として世に問うた本書は、東京大学教養学部学生自治会が新入生向けに開催した講演会(二〇〇二年六月)での発言を再構成したものである。
 冒頭、論語からの引用がある。

 学びて思わざれば罔し。思いて学ばざれば殆し。

 「学んでもみずから考えなければ、本当の知識にはならない。みずから考えていても学ばなければ独善に陥いる危険性がある」というような意味だが、加藤はここでの「思う」をドイツ語の“Problematik”(プロブレマティーク)の意に解釈している。思うとは、すなわち問題性を意識化すること。

 加藤の読みの特質は、古今東西のテクストや概念を自在につないで思考の地平を広げていくことにある。それはまた自身の体験に深く根ざしていたように思う。まさに「学びつつ思うこと」を生涯続けた人であった。
by syunpo | 2009-07-26 20:28 | 思想・哲学 | Comments(0)
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