●佐々木毅著『政治の精神』/岩波書店/2009年6月発行
複雑な課題が山積しているなか、いかに「政治的統合」を実現していくか。本書は書名そのままにその実現に向けて必要となる「政治の精神」のあるべき姿を説いた本である。 政治家を念頭においた「政治をする精神」、政治家を選ぶ国民を対象にした「政治に関与する精神」、さらに終章として「政党政治の精神」が考察の対象となっている。 政党政治の精神を叙述した後半部で、政権公約(マニフェスト)の導入が選挙のあり方だけでなく政党のあり方をも転換させる意義をもつという指摘や、「政治主導」と「政治家主導」の相違について論述している点などそれなりに面白い。しかし全体を通して、福沢諭吉、マックス・ウェーバーらの先賢に依拠して展開される主張にはさして独創性も目新しさも感じられず、その教説的な叙述にはいささか退屈させられた。 日本政治の状況に対する分析も凡庸そのもの。 たとえば、政党間競争の欠如が政党内における人材の育成を妨げたという認識も、自民政権における内閣と与党の二元構造の弊害についても、言葉使いに違いはあっても内容的にはすでに多くの論者が指摘してきたことではないか。 官僚との関係を軸になされる政治家のリーダーシップをめぐる議論に関しては、議院内閣制の本義に沿って吟味した飯尾潤の考察の方がはるかに説得力を感じるし、自民党政治の問題点の指摘、それを受けての政党政治の改革を説く一連の考察についても、山口二郎の分析の方が具体的でわかりやすい、と思った。 どうにも冴えない本である。
by syunpo
| 2009-11-28 17:09
| 政治
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