●佐藤優著『この国を動かす者へ』/徳間書店/2010年3月発行
版元の週刊誌に連載していたコラムを一冊にまとめた本である。読み物としては面白かったが、本書の帯紙にある「鳩山政権を巡るインテリジェンス全考察」というのはいささか誇大な気がした。たとえば小沢一郎対検察の戦争について考察したくだりなど、その核心部分においては推論の域を出ないもので、新味にも切れ味にも欠ける。 またオバマ大統領の演説の言い回しにムッソリーニと同種のファシズム的な匂いを嗅ぎつけたりするのもちょっと強引だろう。それをいうならアフガン戦争を開始した頃のブッシュ政権時代の方がはるかにファッショ的だったのではないか。 本書においてもやはり古巣の外務省の実態暴露やロシアの状況に関する解説に著者の蓄積が活きているように思えた。ただし既刊書の記述と重なる部分も多い。 並みの官僚には感じられない深い学識に加えて国家の暴力性を直接に体験させられたという特異な経歴が佐藤を一躍メディアの寵児に押し上げたが、失礼ながらそろそろネタ切れの気配が漂ってきた。
by syunpo
| 2010-05-12 19:31
| 政治
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