ブックラバー宣言


コラムニスト・吉本俊二の書評ブログです。
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必読書リストも付いているよ〜『私学的、あまりに私学的な』

●渡部直己著『私学的、あまりに私学的な』/ひつじ書房/2010年7月発行

b0072887_18193145.jpg 本書は、日本ジャーナリスト専門学校、近畿大学、早稲田大学などもっぱら「私学」の教育機関で教えてきた文芸批評家による「陽気で利発な若者へおくる小説・批評・思想ガイド」である。冒頭記された〈本書の使用法〉によれば、著者自身の積年の厳選「ネタ帖」でもあるらしい。

 ガイドと銘打っているだけあって、なかなか親切に出来ている。〈1年次〜基礎演習〉に始まり〈2年次〜テクスト論・ジャーナリズム演習・文芸批評理論〉〈3・4年次〜テクスト読解・批評ゼミ〉を経て〈大学院〜現代文芸研究指導〉へと文章の難易度も次第にステップアップしていくという構成。基本的には渡部がメディアに発表したコラムや批評文が収録されているのだが、種々雑多の文章を一冊にまとめた編集者の工夫のほどがうかがわれる。

 渡部の特長はどちらかというと低学年次のチャプターに収められた〈出来れば「優」を取りたい人のための「十戒」〉やNHKの換言マニュアルを分析した〈禁語録〉などの軽妙なエッセイに発揮されているのでないか。
 前者はレポート作成のノウハウ伝授という体裁をとりながら、「読む」ことをめぐる著者の思考=試行のあとがさりげなく刻みこまれていて、単なるハウツー物の域をこえた文章になっている。「共感とはしみじみすることではななく、深くうろたえることの別称である」といったフレーズなどつい引用したくなるような箴言が随所に顔をだす。後者では換言にみる公共放送局の政治性や思考の不徹底ぶりが鋭く抉られていて痛快。
 高学年次のテクスト読解篇では、中原昌也や川上未映子の小論のほか、後藤明生や谷崎潤一郎の本格的な作品論・作家論が並び、こちらは生半可な素養と読み方では弾き返されてしまいそうだ。

 ただし、著者の批評とりわけスポーツ批評は「サッカーの『チームプレー』とは本来、最高度に身勝手な者たちが、自由自在に作戦と戯れ、しばしば作戦をこえて不意の連携を作り出す一瞬の総和」であるといった言い回しに象徴されるように失礼ながら蓮實重彦の亜流ではないか──という以前からの印象を本書においても完全に払拭することはできなかったことを率直に言い添えておこう。
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by syunpo | 2010-10-05 18:27 | 文学(小説・随筆) | Trackback | Comments(0)
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