プラトン対話篇の良き入門書〜『メノン』

●プラトン著『メノン 徳について』(渡辺邦夫訳)/光文社/2012年2月発行

b0072887_1733198.jpg〈徳(アレテー)〉とは何か。二〇歳の青年メノンとソクラテスの対話という形式で記された本書はプラトン対話篇のなかでも良き入門書として知られている。
 正直なところ私にはあまり面白く感じられなかったが、本書において初めて「想起説」なるものが提起されているのは注目される。想起説とは「魂は(生前から)すべてのことを学び知っている。人が学習と呼んでいるものは魂がすでに知っていることを想起すること」だとする考え方だ。

 これは、ソクラテスの〈探究のパラドックス〉に対してメノンが疑問を呈したのに答えたものである。ソクラテスは前段で「わたしのほうは、徳が何であるか、知らないのだ。……それでも、徳とはいったい何か、わたしはきみとともに考察し、ともに探究したいと思うのだ」と述べる。それに対してメノンは「知っていることであれば人は探究しないし、知らないことは探究できないではないか」という〈探究のパラドックス〉を指摘したのだ。

 このコンテクストでもちだされる想起説について訳者の渡辺は「かなり風変わりな答え方」と論評しているが、その後の著作でもプラトンは想起説について言及しており、プラトン哲学の重要な思想の一つといわれている。

 それにしても。素人の素朴な疑問。それでは魂がすべてのことを知っていることをあなたはどうして知ったのですか、とメノンがしつこく問うたとすれば。ソクラテスは何と答えたのであろうか。
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by syunpo | 2012-10-20 17:38 | 思想・哲学 | Trackback | Comments(0)
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