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ベストセラーを斬りまくる!〜『百年の誤読』

●岡野宏文、豊崎由美著『百年の誤読』/ぴあ/2004年11月発行

ベストセラーを斬りまくる!〜『百年の誤読』_b0072887_21585459.jpg 二人の書評家が一九〇〇年から現代(二〇〇四年)までのベストセラーを読み、対論形式で寸評を加えていくという本である。難癖のつけ方が人生幸朗・生恵幸子のボヤキ漫才を思い出させもする、ざっくばらんな物言いはそれなりに痛快。
 長塚節の『土』は「悪夢のディズニーランド」(豊崎)とコキおろされ、武者小路実篤『友情』は「頭よくない」作家による「トンデモ本」(豊崎)、高村光太郎の『智恵子抄』は繰り返しの多さから「コピー&ペースト詩」(岡野)の烙印が押される。

 時代が下るにしたがって駄本が増えてくることに今さらながら嘆息せずにはいられないが、多くの読書家が読まずにくだらないと一蹴してきたタレント本などもきちんと読んだうえでメッタ斬りにする、その熱意と労力には頭がさがる。

 読解のクオリティーでは奥泉光・いとうせいこうの《文芸漫談》シリーズには遠く及ばないものの、二〇世紀前半の名作・秀作に対する関心をあらためて呼び起こしてくれることは事実。ガルシア・マルケスの代表作をパロった書名も秀逸だ。なお本書は二〇〇八年に筑摩書房により文庫化されている。
by syunpo | 2013-11-05 22:03 | 書評 | Comments(0)
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