●岡野宏文、豊崎由美著『百年の誤読』/ぴあ/2004年11月発行
二人の書評家が一九〇〇年から現代(二〇〇四年)までのベストセラーを読み、対論形式で寸評を加えていくという本である。難癖のつけ方が人生幸朗・生恵幸子のボヤキ漫才を思い出させもする、ざっくばらんな物言いはそれなりに痛快。 長塚節の『土』は「悪夢のディズニーランド」(豊崎)とコキおろされ、武者小路実篤『友情』は「頭よくない」作家による「トンデモ本」(豊崎)、高村光太郎の『智恵子抄』は繰り返しの多さから「コピー&ペースト詩」(岡野)の烙印が押される。 時代が下るにしたがって駄本が増えてくることに今さらながら嘆息せずにはいられないが、多くの読書家が読まずにくだらないと一蹴してきたタレント本などもきちんと読んだうえでメッタ斬りにする、その熱意と労力には頭がさがる。 読解のクオリティーでは奥泉光・いとうせいこうの《文芸漫談》シリーズには遠く及ばないものの、二〇世紀前半の名作・秀作に対する関心をあらためて呼び起こしてくれることは事実。ガルシア・マルケスの代表作をパロった書名も秀逸だ。なお本書は二〇〇八年に筑摩書房により文庫化されている。
by syunpo
| 2013-11-05 22:03
| 書評
|
Comments(0)
|
検索
記事ランキング
以前の記事
カテゴリ
全体 思想・哲学 政治 経済 社会全般 社会学 国際関係論 国際法 憲法・司法 犯罪学 教育 文化人類学・民俗学 文化地理学 人糞地理学 地域学・都市論(国内) 地域学・都市論(海外) 先史考古学 歴史 宗教 文化全般 文学(小説・批評) 文学(詩・詩論) 文学(夏目漱石) 文学(翻訳) 言語学・辞書学 書評 デザイン全般 映画 音楽 美術 写真 漫画 絵本 古典芸能 建築 図書館 メディア論 農業・食糧問題 環境問題 実験社会科学 科学全般 科学史 生物学 科学哲学 脳科学 医療 公衆衛生学 心理・精神医学 生命倫理学 グリーフケア 人生相談 ノンフィクション ビジネス スポーツ 将棋 論語 料理・食文化 雑誌 展覧会図録 クロスオーバー 最新のコメント
タグ
立憲主義
クラシック音楽
フェミニズム
永続敗戦
ポピュリズム
日米密約
道徳
印象派
マルチチュード
テロリズム
アナキズム
想像の共同体
古墳
イソノミア
社会的共通資本
蒐集
闘技民主主義
厳罰化
規制緩和
AI
ブログジャンル
|
ファン申請 |
||