●桂米二著『上方落語十八番でございます』/日本経済新聞出版社/2010年5月発行
桂米朝一門のなかでも理屈っぽいことで知られる桂米二。文筆の方面でも活躍しており、日本経済新聞のウェブサイトにコラムを連載したこともある。本書はそのなかから一部を抜粋して編んだもの。一回ごとに落語の演目を一つ取り上げ、それにまつわる蘊蓄や楽屋話を織り交ぜて解説をほどこす。噺家の本としてはありふれた趣向ではあるが、そこは上方の芸人、噂ほどの理屈っぽさを感じさせることもなく、愉しい読み物に仕立てている。 米朝一門では自分が最初にやったという《百年目》、思い入れたっぷりの一篇はネタの偉大さと相まって本書の冒頭を飾るにふさわしい。《牛ほめ》では、噺のなかに出てくる池田のおっさんの家の模型を展示する落語みゅーじあむの写真を掲載し、建築家の「証言」も取り入れながら、おもしろく読ませる。新作落語のなかでも古典的な風格をもつ名品《まめだ》、作者の故三田純市との思い出話もまじえた一文もまたネタ同様に味わい深い。《代書》は途中で切ってしまうケースが多いが、全編通してやるといろんな人物が登場するらしい。そして上方落語屈指の名作《たちぎれ線香》でしっとり(?)と締め括る。 またこれらの演題の合間に〈ちょっと休憩〉と題して入門時や内弟子時代の懐古談や舞台裏のエピソードなどを配しているのも一興。
by syunpo
| 2014-08-23 11:45
| 古典芸能
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