●石岡良治著『視覚文化「超」講義』/フィルムアート社/2014年6月発行
紀伊國屋じんぶん大賞二〇一五年度の第二位にランクインした本。著者によれば「視覚文化論は、作品批評を含めた文化論であり、哲学や芸術論に隣接した分野」ということらしく、ハリウッド映画、絵画、ポップミュージックのPV、アニメ、ゲームなどなど、視覚文化全般への目配りの広さにはなるほど感心させられる。引用・参照される文献も、ボードリヤールやマクルーハン、ドゥルーズは当然として、リオタール、ガルブレイス、荒木飛呂彦、千葉雅也をはじめ「デジタルゲームの教科書制作委員会」なるユニットの著作まで幅広い。 ただその博覧強記が本書の面白味につながっているかというと疑問符がつく。概論的な能書きにけっこうな字数が費やされているうえに、作品名が具体的に次々と挙げられていくくだりはクリティックというよりも紹介文に毛の生えたレベルだったりする。むろんそうしたカタログ的な記述が一種の批評性を具えていると言えなくもないけれど。本書のハイライトともいえる《バック・トゥ・ザ・フューチャー》に関する分析も私にはいささか退屈だった。 とはいえジャンルの垣根を超えシニカルな懐疑を排してあれもこれもと視線を滑らせていく軽さはやはり貴重なものだろう。インターネットが加速させた「文化の民主化」のなかから必然的にあらわれた書物とでもいえばよいか。またその豊富な参考文献リストは視覚文化を学ぼうとする読者には文字どおりガイダンス的な役割を果たしてくれるかもしれない。
by syunpo
| 2015-02-08 22:43
| 文化全般
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