●小林康夫著『君自身の哲学へ』/大和書房/2015年4月発行
本書は哲学者による「存在の詩学」ともいうべき本である。厳密な理路をたどって何事かを言明するというよりも、たとえばある一つのテクストに導かれながら、思考のヒントを紡いでいくような言葉とでも言えばよいか。 引きこもるという観点から語り始めているのは、とりもなおさず「いま、この時代に、少し現実から引きこもり気味に存在している若い実存」へ向けて語りおろす、という本書の狙いによる。 カフカの《法の前》、村上春樹の《ねじまき鳥クロニクル》、安部公房の《砂の女》などの文芸作品からインスパイアされながらなされる小林の語りは、その平易な口調にも関わらず、必ずしも軽快な道行きを約束してくれるわけではない。だがそれも本書の設定を考慮するならば必ずしも欠点とはいえないだろう。行きつ戻りつしながら、ブリコラージュの可能性に言及し、存在のエコロジーを説く本書の語りは、何度も反芻しながら一人静かに味わうべき言葉といえるかもしれない。
by syunpo
| 2015-04-28 19:32
| 思想・哲学
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