「一」と「多」の間を揺れ動く旅〜『それでも世界は文学でできている』

●沼野充義編著『それでも世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義3』/光文社/2015年3月発行

b0072887_1981396.jpg《対話で学ぶ〈世界文学〉連続抗議》シリーズの第三弾。沼野充義がもっぱら聞き役となってゲストと対談・鼎談した記録である。今回のゲストは、加賀乙彦、谷川俊太郎&田原(ティエン・ユアン)、辻原登、ロジャー・パルバース、アーサー・ビナード。

 加賀乙彦のトークは私にはいささか退屈だったが、精神科医らしく認知症予防のためにも読書を勧めているのがおもしろい。谷川俊太郎と田原を迎えての鼎談は、詩の普遍性をめぐって谷川と田原が意見を異にする場面があって、議論に深味はないものの本書のなかでは数少ないスリリングなやりとりになっている。辻原は模倣やパスティーシュを肯定的に語っているところに「らしさ」が出ているといえようか。

 パルバースはスパイの嫌疑をかけられた経験談をヒューモアたっぷりに聴かせて楽しい。ビナードは宮沢賢治の《雨ニモマケズ》の歴史的背景が現代の日本社会とまったく異なることを具体的に指摘し「過去は一種の外国だ」というハートレイの言葉を引用する語りが印象深い。そこでは古典との距離の取り方が問題となるのである。
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by syunpo | 2015-07-06 19:15 | 文学(小説・随筆) | Trackback | Comments(0)
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