●岩波書店編集部編『私の「戦後70年談話」』/岩波書店/2015年7月発行
安倍晋三首相は二〇一五年八月、「戦後七〇年談話」を発表した。その評価は人それぞれであろうが、本書では各界で活躍中の人々の「戦後七〇年談話」を収録している。「戦前・戦中・戦後の日本を知っている」四十一名の著名人が「次の世代に、いま、これだけは語っておきたい」「もし自分が戦後七〇年談話を出すとしたらこういうことを書く」といったことを存分に語るという趣向である。 戦前・戦中を知っている人たちだけに、やはり当時の体験談をベースにした談話が多い。事実をもって語らしめよ。戦争を知らぬ者がただちに好戦的になるわけでもなかろうが、知らない者が歴史に学ばず体験者の話に耳を傾けず知性を働かせなければ、同じ轍を踏むリスクは高まるに違いない。 ただ論調としてはいささか紋切型におさまった談話が少なくない。戦争はかくも悲惨であった、二度とこの過ちを繰り返してはならない。そのような定式におさまる文章に触れて、たとえばこの度成立した一連の安保法制に賛成の人が考えを改めることはあるのだろうか。 そんななかで、戦後民主主義体制の矛盾や欺瞞性に切り込んだC・ダグラス・ラミス、「戦う民主制」をキーワードに日本の平和主義に言及する長尾龍一、戦後七〇年とともに二年半後にせまる明治維新一五〇年を総括せよと主張する坂野潤治の談話などには学ぶところがあった。
by syunpo
| 2015-10-05 19:25
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