●又吉直樹著『火花』/文藝春秋/2015年3月発行
売れない漫才師と彼が師と仰ぐ先輩芸人との関係を軸に、芸人世界の人間模様と葛藤を描く。「笑い」とは何か。芸人にとってもっとも大切なことは何か。そうした根源的な問いに主人公の徳永も先輩芸人の神谷さんも真剣にそれ故に時に滑稽なまでに向きあおうとするのだ。 又吉の書きぶりは外連味なく、高校野球のようなひたむきさで二人の奮闘ぶりを描出していく。一途に笑いを追求していくことは、こんなにも清々しいことだったのだ。ただ、どういえばいいのか、一篇の文芸作品としては今ひとつ深味に欠けるような読後感を拭うこともできなかった。とくにラストがいただけない。神谷さんの所業に対して徳永が涙ながらに、いわゆるポリティカルコレクトネス的に批判する場面があまりにも「真っ当」すぎて、正直、私にはつまらなく思えた。 とはいえ又吉の生真面目な筆致には捨てがたい魅力を感じないでもない。これからさらにどういう作品を作りあげていくのか、今後を楽しみにしよう。
by syunpo
| 2016-01-27 19:30
| 文学(小説・批評)
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