●高橋源一郎、SEALDs著『民主主義ってなんだ?』/河出書房新社/2015年9月発行
本書はSEALDsのメンバー三人と作家・高橋源一郎が語りあった記録である。前半はメンバーの生い立ちや活動を始めたきっかけ、SEALDsの方針や活動実態など。後半はタイトルにあるとおり「民主主義ってなんだ?」をテーマに、より一般的な議論が展開されている。彼らが街頭や国会前で活動を始めるようになった直接の理由である安倍政権の政策に対する批判は控えめで、原理的・理念的な話が中心になっているのが本書の特徴といえるだろう。 学生たちの民主主義論・立憲主義論はむろん大雑把なもので理論的にはいくらでもツッコミどころはあるけれど、ここでそれを指摘することにさほど意味があるとも思えない。いや、それ以上にむしろルジャンドルやデューイ、イロコイ族に関する人類学的知見を参照するなど、その勉強家ぶりには感心させられたほどである。自分自身の学生時代を振り返ってみても、彼らほど政治の勉強をしていなかったと思う。 一方、高橋も学生たちの話によく耳を傾けながら、彼らの生煮えの言葉を巧みに補完するような役回りを嫌味なく演じている。古代アテネの民主主義論をベースにしつつ、ルソーの読解などに(とくに名指ししているわけではないが)闘技民主主義理論など新しい政治哲学的理論をも踏まえて発言しているのが印象にのこった。とりわけ「決める」こと以上に自分の意見を反映させることができなかった人々の納得を得る手続きやプロセスを重視する点に民主主義の本義を見る高橋の議論は傾聴に値するのではないか。
by syunpo
| 2016-01-31 18:35
| 政治
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