●宮崎学、佐藤優著『戦争と革命と暴力 平和なき時代の世界地図』/祥伝社/2015年9月発行
戦後七〇年の二〇一五年、二人の論客が語りあった記録。キーワードは〈戦争〉〈革命〉〈暴力〉である。といっても話はあちこちに飛翔する。イスラム国を中心とする中東情勢の分析に始まり、戦後の市民運動の歴史を概括し、バブル時代を振り返る……というのがおおまかな構成である。 前半は私には退屈だったが、後半になって二人の活動歴をからめて日本の「革命」的運動を回顧するあたりからおもしろくなった。とりわけバブル期に地上げ屋をやっていた宮崎の裏話は興味深い。神保町のおやじたちが土地を高値で売るときに、どのような節税・脱税対策を行なったか。バブルで稼いだ元左翼活動家がいかに舞い上がって没落したか。それを受けて佐藤はソ連解体時のマネーゲームは殺人に発展する恐ろしいゲームだったことを紹介する。現場での経験が豊富な二人だけにこの種の話題の方が二人の特徴が出てきて、対話がより活気づくように思われる。 日本の現状と将来については、二人とも悲観的である。たとえば反安保法制に関わる市民運動については「運動に没頭する迫力は感じられません」と宮崎は言う。ただ彼らが活動していた頃と今とでは運動のあり方そのものが変貌してきている。時代は変わった。二人の回顧談のあとにこうした発言に接すると、いささかオジン臭く感じられるというのが正直なところ。もっとも安倍政権の安保政策に関して、佐藤が「日本に戦争をする根性はありません」とアイロニカルに断言し「弱い暴走族のようなもの」と斬ってすてるあたりは佐藤の面目躍如という感じがした。
by syunpo
| 2016-02-25 20:05
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