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正直・親切・愉快に〜『「意地悪」化する日本』

●内田樹、福島みずほ著『「意地悪」化する日本』/岩波書店/2015年12月発行

正直・親切・愉快に〜『「意地悪」化する日本』_b0072887_844579.jpg「論争」を拒否している内田樹センセイは意見の合う人との「対談」はお好きなようで、最近はやたらその種の書物を出している。本書の相手は参議院議員の福島みずほ。

 キーワードは書名にも採用されている社会の「意地悪」化である。

 意地悪というのは、今の日本のキーワードですね。パイがどんどん小さくなって、お金がどんどんなくなるなかで、ちょっとでもいい思いをしている人間を叩く。(福島、p68)

 日本の「意地悪」化というのは、言い換えれば「他人が何かを失うことが、自分の得点にカウントされる」という発想から生まれてきているんだと思います。(内田、p189)


 こうして「意地悪」化した人々が支える公権力者たちの振る舞いが批判的に論評されていく。そのうえで「正直・親切・愉快」に生きることが推奨される、というのが本書の趣旨である。

 それにしても、内田の安倍・橋下批判はむしろ自己批判と読んだ方が事実に即しているかもしれない。「この二人は異論と対話する気がない点ではほんとうによく似ています」と厳しく非難しているが、それは内田自身が繰り返し明言している基本姿勢でもある。学者はそれでもいいが公人には許されない、とでもいうのだろうか。たぶんそういうことなのだろう。私は安倍政権をまったく支持しないけれど、本書の対話もかなり杜撰で退屈だったというのが偽らざる感想である。
by syunpo | 2016-03-21 08:56 | 政治 | Comments(0)
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