●佐高信著『民主主義の敵は安倍晋三』/七つ森書館/2014年8月発行
《佐高信の緊急対論50選》シリーズ三冊のうちの一冊。本書は《地の巻》と銘打たれている。緊急対論といっても実際には巻頭の一つを除いて過去数年間に行なわれた対論を収録したものである。とくに後半は、徳間康快や久野収、藤沢周平らの回顧談をゆかりの人と交わしたもので、緊急性はまったくない。 政治を主題とした対論では良くも悪しくも佐高の特徴がよく出ている。「左翼」的言説は自分の役割をよく弁えたものであるとはいえ、やはり平板な印象も拭えず、知的刺激には乏しい内容といったら失礼か。象徴的なのは赤木智弘をめぐる雨宮処凛との対話。雨宮は赤木に理解を示そうとするのに対して、佐高はもっぱら新自由主義的な政治傾向を批判するばかりで最後まで議論が噛み合わない。 もっとも多士済済の対談相手の言葉には印象に残るものが少なからずあった。二〇〇七年の座談で、小森陽一が立憲主義の重要性を力説していたことは注目に値するだろうし、鈴木邦男が北朝鮮訪問した時の挿話も読み物としてはおもしろい。師弟関係がテーマになっている四方田犬彦との対談では「一子相伝がなくなると文化は滅びてしまうでしょう」との言葉を四方田から引き出すなどそれなりに含蓄に富んだ内容である。
by syunpo
| 2016-05-25 20:38
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