短歌に人生の居場所を見つけた〜『キリンの子』

●鳥居著『キリンの子 鳥居歌集』/KADOKAWA/2016年2月発行

b0072887_18341739.jpg 壮絶というほかない。ここに収められた短歌を読むと、言葉にすがるようにして何とか生きている人もいるのだ、ということを思い知る。

 著者の鳥居は、小学校五年生のとき、目の前で母親に自殺され、その後は養護施設での虐待、ホームレス生活などを体験。義務教育もまともに受けられず、文字を覚えるのも短歌に関してもほぼ独学で学んだとプロフィール欄にはある。自殺をはかったこともあるようで、そのことをうたった短歌もいくつか収められている。

 亡母や祖母との思い出にふれた歌は、美しくも哀しい。母や家に関する歌といえばあの寺山修司を想起するが、それはかなり虚構性や演技性に富んだ、作り込まれたものだっただろう。寺山の真価はまさにそうしたところにあったと思われるが、鳥居の場合はもっと切羽詰ったところから絞り出してきた言葉という印象を受ける。もちろんどちらが良いとか悪いとかいう話ではない。

 いずれにせよ本書に付された「短歌に出会って人生に居場所を見いだせた」というキャッチコピーには誇張はないだろうと思う。

 あたらしいノートの初めの一頁まだぎこちない文字を並べる
 目を伏せて空へのびゆくキリンの子 月の光はかあさんのいろ
 雑草の葉の部分だけむしりつつ祖母の畑に見上げるトマト
 女子生徒たちの自転車石鹸の香り引きつれ隣町まで
 手を繋ぎ二人入った日の傘を母は私に残してくれた

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by syunpo | 2017-02-03 18:35 | 文学(詩・詩論) | Trackback | Comments(0)
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