どうでもいい話題を熱く語る〜『芸能人寛容論』

●武田砂鉄著『芸能人寛容論 テレビの中のわだかまり』/青弓社/2016年8月発行

b0072887_1828244.jpg『紋切型社会』で話題を集めた武田砂鉄の第二作目。論評の対象となっているのはタイトルに謳われているように主に芸能人であるが、テレビにも露出するトマ・ピケティのような学者や織田信成のようなスポーツ選手もふくまれている。

 与沢翼の転落を座高測定の廃止と絡み合わせて考察するかと思えば、前園真聖を阿川佐和子と並べて論じたりする。中山秀征は成果主義が日本の形態に似合わないことを教えてくれる存在だといい、ネプチューン名倉潤を終電まで語り尽くす必要性を熱く語る。騒動前のベッキーについて論じた一文は的を外した感はあるけれど、それもご愛嬌。

 テレビをとおして浮上してくる種々雑多な問題をねちっこく斬ってさばいていく手際は相変わらず達者なものだが、前著以上に題材としては一般のインテリ言論人なら無視するようなものを扱っているので、その熱さとテンションは一種異様といいたくなるほど。とにかく語っている内容よりも語り口に話芸の妙が脈打っているのだ。

 夏目三久アナを論評するのに、他のアナウンサーの書いた本──『半熟アナ』(狩野恵里)、『聞く笑う、ツナグ。』(高島彩)、『ことたま』(馬場典子)、『アナウンサーの日本語論』(松平定知)──などを参照する、その労力にも頭がさがる。

 私はテレビを観ないので、本書で俎上に載せられている芸能人には知らない人が少なくないのだが、そのことは本書の通読にさして障害にはならなかった。武田の論調や文体は好悪を分かつだろうけれど、私には愉しい本であったといっておこう。
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by syunpo | 2017-02-10 18:32 | メディア論 | Trackback | Comments(0)
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