ブックラバー宣言


コラムニスト・吉本俊二の書評ブログです。
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他者への想像力をきたえるために〜『「今、ここ」から考える社会学』

●好井裕明著『「今、ここ」から考える社会学』/筑摩書房/2017年1月発行

b0072887_2032337.jpg『排除と差別の社会学』『戦争社会学』などの著作で知られる好井裕明による社会学の入門書である。ちくまプリマー新書の一冊。

 導入部で六人の社会学者を紹介しているのが本書の良き羅針盤となっている。行為の社会性に注目したマックス・ウェーバー。相互行為に焦点をあて闘争の社会学を論じたゲオルグ・ジンメル。「構造」という視点から秩序や道徳を考えたエミール・デュルケーム。主我(I)と客我(me)のダイナミクスによる自己の形成を考えたジョージ・ハーバート・ミード。「日常生活世界」を再発見しそれを重要な課題としたアルフレート・シュッツ。互いに差異をもった「人々の方法」論としてエスノメソドロジーを提唱したハロルド・ガーフィンケル。

 本書のタイトル「今、ここ」はシュッツの日常生活世界に拠る。ただし本書の解説を読んでも、その意味や画期性は私には今ひとつ理解できなかったのだが。

 この世界は、私という人間存在を中心として空間的、時間的に位相を変えて構成されています。そしてその世界のゼロ点であり、意味を生きている私の存在を確認できる原点が「今、ここ」という瞬間なのです。(p36)

 この箇所に限らず全体を通して理念やお題目が先行していて、私にはいささか退屈な読み味だったというのが正直なところ。
 スマホを中心とするIT時代の考察も紋切型の域を超えているとは思えないし、障害者の問題に関してもとくに異論はないものの優等生的な記述がつづき、私的には社会学の醍醐味を充分に感じるまでには至らなかった。

 考えてみればすぐわかるように、私たちが普段生きているとき、具体的に出会う人々よりも出会わない人の数の方が圧倒的に多いのです。とすれば出会わない人々と自分が「今、ここ」で生きているとはどういうことなのかなどを考え、「見たことのない、会ったことのない他者」が同じ時間を生きていることへの想像力を鍛え他者理解のセンスを磨くことは、けっこう面白い営みではないでしょうか。(p189)

「今、ここ」と「会ったことのない他者」とをいかにつなげて考えていくのか。口でいうほど簡単なことだとは思えないが、具体的にそれを思索し実践するのは読者自身ということなのだろう。
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by syunpo | 2017-03-23 20:36 | 社会学 | Trackback | Comments(0)
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