ブックラバー宣言


コラムニスト・吉本俊二の書評ブログです。
by syunpo
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
検索
記事ランキング
最新の記事
カテゴリ
以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
マーラーが死の前年に書き..
from dezire_photo &..
経済成長がなければ私たち..
from 天竺堂の本棚
『せつない(新訳 チェー..
from 施設長の学び!
カール・マルクス『ルイ・..
from 有沢翔治のlivedoorブログ
愛国の作法
from 蔵前トラックⅡ
雑考 自由とは何か④
from 読書メモ&記録
東浩紀 『クォンタム・フ..
from 身近な一歩が社会を変える♪
純粋に哲学の問題だ「ベー..
from 夕陽の回廊
バーンスタインのミュージ..
from クラシック音楽ぶった斬り
memento mori..
from 試稿錯誤
タグ
ブログジャンル

偽物は本物の対立物に非ず!?〜『ニセモノ図鑑』

●西谷大編著『ニセモノ図鑑 贋造と模倣からみた文化史』/河出書房新社/2016年10月発行

b0072887_1221674.jpg 国立歴史民俗博物館が二〇一五年に開催した企画展《大ニセモノ博覧会─贋造と模倣の文化史!》の展示内容をベースに編集した本。ニセモノ(フェイク、イミテーション、コピー、レプリカなど)の意義や価値を文化史の観点から再考しようという試みである。

 人をもてなすうえで重要な空間だった大家の「床の間」を歴史的に再検証したり、偽文書の時代背景を考察したり、コピー商品の価値を天目茶碗を実例として吟味したり、人魚などの架空の存在を博物学的に振り返ったり……と内容は多岐にわたる。

 全体をとおしてニセモノ文化に対して寛容な態度、という以上に積極的な価値を見出そうとする姿勢が貫かれている。たとえば偽文書の研究をとおして当時の社会状況や時代背景を個別具体的に知ることができるし、博物館におけるレプリカには、実際に見聞することのできない物事を時空を超えて展観できる大きなメリットがあるだろう。

〈本物/偽物〉という旧套な二項対立を相対化・無効化するような論考はジャン・ボードリヤールをはじめこれまでにも提起されてきたので、本書のスタンスに独創性があるわけではない。が、基本的には本物を志向しているはずの博物館の企画展示という点では、冒険的なものであった様子がうかがわれる。そのあたりの楽屋話も後半に披瀝されていて興味深い。

 いささか散漫な印象は拭えないが、写真やイラストなどビジュアル素材がふんだんに掲載された作りは「図鑑」の名にふさわしく、楽しい本であると思う。
[PR]

by syunpo | 2017-04-14 12:28 | 文化全般 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://syunpo.exblog.jp/tb/26788050
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
<< 最高の権力作用に関する考察〜『... アナーキー!?な魅力に満ちた絵... >>