●ピーター・ニューエル著『さかさまさかさ』(高山宏訳)/亜紀書房/2015年10月発行
マルク・シャガールは「絵画はどの方向から見ても鑑賞に堪えるものでなければならない」と述べた。 キャンバスを逆さにしても横に転がしても作品として成立すること。それが絵画の条件なんだとシャガールは言ったのである。なるほど彼の作品には浮遊感がただよっていて、天地左右の別なく鑑賞できそうな作品が少なくない。 同じようなことを絵本の魔術師ピーター・ニューエルも考えたらしい。本書はそれを具現化したものである。すなわち上下をひっくりかえして見ても楽しめる絵本。 とにかく楽しい。かきねから顔を出している象。さかさに見るとダチョウに。クリスマス・イヴにだんろに靴下をさげる少女。ひっくり返すと袋をせおってえんとつを降りようとしているサンタに早変わり。いくさの格好をしたインディアン。かと思えば木の枝にとまった小鳥に……。 こうしたアイデアは自分の子供がまちがえて上下さかさまに絵本を読もうとしているのをみて思いついたのだという。ヒントはどこにでもころがっているともいえるが、一冊の絵本にするだけの絵を描くのはやはり才能のある人に限られるだろう。ニューエルならではの仕掛けとユーモアには敬服するほかない。 原書は一八九三年の刊行。日本では紹介が始まったばかりらしいのだが、絵本の分野では古典的名作の一つといっていいのかもしれない。
by syunpo
| 2017-05-26 19:50
| 絵本
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