翻訳者とは幽霊のようなもの!?〜『8歳から80歳までの世界文学入門』

●沼野充義編著『8歳から80歳までの世界文学入門 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義4』/光文社/2016年8月発行

b0072887_844764.jpg ロシア・ポーランド文学の研究者として知られる沼野充義がホスト役をつとめる「対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義」シリーズの第四弾。『世界は文学でできている』『やっぱり世界は文学でできている』『それでも世界は文学でできている』につづくものである。

 今回のゲストは、池澤夏樹、小川洋子、青山南、岸本佐知子、マイケル・エメリックの五人。
 私にはいささか退屈な対話がつづいたなかで、最後に収められているマイケル・エメリックの発言がもっとも面白く感じられた。エメリックは日本の現代文学の翻訳や源氏物語の研究で知られるジャパノロジストである。

「翻訳者というのは二つの世界に属しながら、どちらにも完全には属していない幽霊のようなもの」とエメリックは考える。それは「異文化間の架け橋」というありふれた認識を斥けるものである。翻訳者=幽霊説には大いに惹かれるところがあるのだが、沼野はあくまでも「足がついていないとちょっと困る」という自説に拘泥してしまって、それ以上議論を深めることなく別の話題にうつってしまったのはちと残念。

 マイケル・エメリックには日本語の著作は少ないようだが、彼の存在に関心をもつ契機を与えてくれただけでも本書を手にとった甲斐があったというべきだろう。
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by syunpo | 2017-08-05 08:45 | 文学(小説・随筆) | Trackback | Comments(0)
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