●奥村宏著『判断力』/岩波書店/2004年4月発行
奥村宏といえば、独自の「法人資本主義」論に基づく企業論・会社論で知られ、私も折りに触れて愛読してきたけれど、本書はテーマを「判断力」と大括りにしたために、内容的にはやや大雑把で散漫なものになってしまった。 日本の学問、とりわけ経済学には輸入思想が蔓延っていることが「判断力」涵養にとって最大のネックだ、故に「判断力を取り戻すには輸入思想からの脱却が必要」というのが本書の基本認識になっている。したがって、記述の中心は日本の経済学の状況論におかれているのだが、その合間に企業経営や政治、ジャーナリズム、大学教育などの課題にも言及されていて、話の流れがどうも落ち着かないのが残念であった。 最終節の「判断力をつけるために」では、新聞を批判的に読みながらスクラップせよとか、他人と論争することで判断力が養われるのだ、といった提言がなされ、さらに「判断力をつけるためには人物や本の批評をするのがよい。そしてその人の判断力は人物評や書評にもっともよくあらわれる」(p188)との記述もあって、ドキリとさせられる。 さて、著者がこのブログを読めば、私の「判断力」をいかに評定するのであろうか?
by syunpo
| 2007-12-22 17:00
| 思想・哲学
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