●福岡伸一著『フェルメール 光の王国』/木楽舎/2011年8月発行
美術にも造詣の深い売れっ子の生物学者がフェルメールの絵画を観て廻る。それぞれの地にゆかりのある科学者を想起しながら時にフェルメールの画業と重ねあわせるその視点は、いかにも生物学者らしい眼と想像力を感じさせる。ニューヨークと野口英世。パリとガロア。ロンドンとワトソン&クリック。ベルリンとシェーンハイマー。 そして本書をとおしてキーワードとなっているのは「微分」「界面」といった科学的な用語である。福岡からみれば、フェルメールの絵画は「光のつぶだち」を凝視しながら移ろいゆく世界の動的平衡を画家の立場から「微分」したものとして捉えられるのだ。 この世界にあって、そこに至る時間と、そこから始まる時間を、その瞬間にとどめること。フェルメールは絵画として微分を発見したのである。(p238) 同じような趣向でニューヨーク在住のジャーナリストが記した『フェルメール全点踏破の旅』とは一味も二味も違う世界が広がっている。旅に同行したカメラマン・小林廉宜の写真がふんだんに使われた美しい本である。
by syunpo
| 2011-10-31 19:17
| 美術
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