●萱野稔人、神里達博著『没落する文明』/集英社/2012年2月発行
東日本大震災とその直後に発生した福島第一原子力発電所の事故。そのインパクトを受け止める知的方法の一つとして本書が提起する主題は「社会や文明のなりたちを自然環境やエネルギーの問題から考えること」である。 昨今の知的傾向にあらがって──と萱野が大上段に構えた割には全体をとおしてさして斬新な論点が打ち出されているとも思えず、いささか拍子抜けしたというのが率直な読後感。結論的に主張されている「経済成長から脱成長社会へのパラダイムシフトを」という提起も大枠においてはすでに多くの論者が述べてきたことではないか。 今となっては異論も少なからず出されているウェーバー的な国家=暴力論や日本社会を無責任の体系とみなした丸山眞男など先人の知見を要所で参照している点ではむしろ本書の社会認識は古典的とさえいえるだろう。
by syunpo
| 2012-05-19 09:30
| 思想・哲学
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