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ブックラバー宣言

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天才アーティストの魂の軌跡〜『無限の網』

●草間彌生著『無限の網 草間彌生自伝』/新潮社/2012年4月発行

b0072887_10472538.jpg 水玉と網目模様。反復と増殖。一見単調なモチーフの繰り返しの中に人間の不安と癒しとが共存しているかのような独特の世界が見えてくる。この不思議なクサマ・ワールドはいかにして形成されてきたのか。みずからの芸術観を語る草間自身の言葉はところどころ紋切型におさまっているようにも感じられるが、それでもやはり一気に読まされてしまう。
 現代において心身の病いを彼女ほど切実かつポジティブに創作活動に昇華しえた例を私は他に知らない。二〇一二年一月から四月にかけて大阪で開催され、その後各地を巡回している《草間彌生 永遠の永遠の永遠》展も並外れた創造力を感じさせるものだ。

 ところで本書には自身の作品に関する批評家のコメントが随所に引用されている。前衛アーティストとして自由奔放に創作活動を続けてきた草間の自伝としてはいささか意外に感じられないでもない。しかし幼少の頃から母には絵を描くことを禁じられ、時には罵詈雑言を浴び、また米国での活動を扇情的に報じる日本のメディア報道をもとに母校の同窓会除名の署名運動まで起こされたという草間にとって、他者から承認を得ることはやはり重要なことだったのだろう。

 いつも私を元気づけていた 君のやさしさに打ちのめされて
 心の底から私は「幸福への願望」を道づれに
 探し求めてきたのだった
 それは「愛」という姿なのだ
 (p270、「落涙の居城に住みて」)

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by syunpo | 2012-06-20 10:52 | 美術 | Comments(0)
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