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悪の陳腐さを問う強靭な思考〜『ハンナ・アーレント』

●矢野久美子著『ハンナ・アーレント 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』/中央公論新社/2014年3月発行

b0072887_2259114.jpg 第二次世界大戦中にドイツから米国に亡命して活躍した哲学者ハンナ・アーレント。マルガレーテ・フォン・トロッタ監督による映画『ハンナ・アーレント』のヒットで彼女の著作に対する関心があらためて高まっているらしい。その意味でも時宜にかなった本といえるかもしれない。
 
 ハンナ・アーレントはドイツのユダヤ人家庭に生まれ、はやくから文学や哲学に親しみ、大学では哲学を専攻して、マルティン・ハイデガーとカール・ヤスパースに師事した。ナチ政権下で、一時パリの収容所に送られるも脱出して米国へ亡命、哲学者としての地位をかためていく。その後、アイヒマン裁判を傍聴して書いた『イェルサレムのアイヒマン──悪の陳腐さについての報告』が激しい非難にさらされ、多くのユダヤ人の友人たちが彼女をもとを去っていったことは映画でも描かれるところとなった。ナチとユダヤ人組織の協力関係に言及し、アイヒマンを怪物的な悪の権化としてでなく思考を欠如させただけの凡庸な人間と考えた彼女は、その後も自説を曲げることはなかった。
 論争以後の生活を含めて、本書はアーレントの生涯や思索の足跡を抜かりなく簡潔にまとめた評伝といえよう。アーレントの著作内容を要約する文章にこなれない箇所が散見されるものの、アーレント入門としても最適の一冊。
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by syunpo | 2014-08-04 23:25 | 思想・哲学 | Comments(0)
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