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政党政治の可能性〜『民主主義の条件』

●砂原庸介著『民主主義の条件』/東洋経済新報社/2015年4月発行

b0072887_10281010.jpg 政治不信を解消して民主主義を活性化していくためにはどうすればよいのか。本書はその理論的な指針を示すものである。あるべき民主主義の姿を明確にするというよりも、そのことを議論するうえで重要な論点を提示するというのが主眼。
 そこで本書が重視するのは政党である。政党とは政治における組織であり、組織には個人ではできないような仕事を成し遂げるメリットが多くあるのだ、という。

 政党は組織であるからこそ安定的な決定を可能にします。そして、組織として必要な資源を集めて個々のメンバーを支援することができれば、個人が特定の支持者から強い影響を受けるのを防ぐこともできるでしょう。何よりも、政党は、組織だからこそ、個々の政治家を拘束する選挙区という空間、任期という時間を超えて、安定的・継続的な決定をすることができます。(p82)

 理論的には安定した政治をもたらすはずの政党を有効に機能させるには? 運営のすべてを政党の自主性に委ねるべきではなく、政党法などの制定によって必要条件を明示すること。たとえば著者はそのような提案を行なう。

 また政党のあり方を大きく左右する選挙制度の設計も極めて重要な問題となる。結論的にいえば、中選挙区制は議会のなかで組織を作ることを妨げるという点で良い制度とはいえない。また多数性と比例制を混合した制度も歪みをもたらしやすい。さらにあまり議論されることはないけれど選挙管理機関の独立性を主張しているのもなるほどと思った。

 ただし著者の認識や提案には引っかかる点も少なからずある。多数派の形成に力点をおくあまり「多数派の形成に関係ないくらいの少数の少数派をアリバイづくりのように議会に入れてもほとんど意味がありません」とまでいうのにはまったく賛同できない。たった一人の少数派が議会の腐敗を炙り出すことはしばしば見られることであり、メディアの監視能力が低下している現状を思えば、むしろ貴重な働きをすることもあるだろう。

 また政治家に委ねないで選挙制度改革を行なうことの重要性を力説していながら「国政のレベルで地方の選挙制度改革について検討する」ことを提案しているのはいささか矛盾する。〈国政/地方自治〉は今日ではしばしば厳しい対立軸になっている関係であり、地方の改革を国政に任せれば、地方自治や地方分権を妨げるような方向にすすむ可能性は否定できない。政治を理論的に考えていくことは大切だが、現実を見ない問題提起では充分な説得力をもちえないことも認識すべきだろう。
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by syunpo | 2015-04-18 10:32 | 政治 | Comments(0)
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