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ブックラバー宣言

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市場原理主義に抗して〜『経済学は人びとを幸福にできるか』

●宇沢弘文著『経済学は人びとを幸福にできるか』/東洋経済新報社/2013年11月発行

b0072887_19284657.jpg 宇沢弘文は『社会的共通資本』なる概念で知られる世界的な経済学者である。二〇一四年に他界したが、その文明論的な広い視野に支えられた思考は経済学の地平を超えて影響力を与え続けているといっていいのではないだろうか。

 本書は学究生活を回想するエッセイ、交遊録、書評などを集めたもの。二〇〇三年初版の『経済学と人間の心』を底本として、その後に行なわれた講演録を追加、二〇一三年に新装版として刊行された。

 率直にいって、一冊の本としてはまとまりを欠くことは否めず、大家の雑文集以上のものではない。新自由主義批判にせよリベラルな教育の重要性を説くにせよ紋切り型のスローガン的な文章が目立ち、私にはいささか退屈だった。「社会的共通資本」に関しても数箇所で言及がなされているが、従来の見解を解説的に繰り返すにとどまっている。

 このような形式・内容からすれば、書名の大上段に構えた問いかけはやや羊頭狗肉の感なきにしもあらずといったところ。ノーベル賞候補とまで言われた経済学者の真価を知るには他の本格的な著作を手にとった方がいいだろう。 
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by syunpo | 2015-04-22 19:40 | 経済 | Comments(0)
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