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ブックラバー宣言

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目に見えない世界を感じる〜『続妖怪画談』

●水木しげる著『カラー版 続妖怪画談』/岩波書店/1993年6月発行

b0072887_1015442.jpg『妖怪画談』の好評を得て、その翌年に刊行した続編。七つの章から成る。記紀神話や仏典をもとにした《あの世めぐり》。神さまみたいな妖怪を集めた《神さまに近い方がた》。各地に様々な伝承が残っている《河童たち》。多様性に満ちた妖怪たちを描く《妖怪紳士録》《中国の妖怪たち》。付喪神やそれに類する《憑きもの》。水木の代表作を解説した《鬼太郎血戦録》。

《あの世めぐり》では〈常世の国〉や〈黄泉の国〉〈高天原〉のようなスタンダードな世界だけでなく〈アイヌのあの世〉や〈朝鮮のあの世〉などにも目配りしているところが素晴らしい。
《神さまに近い方がた》としては〈ヤマドッサン〉〈風の三郎さま〉〈箒神〉などが登場するほか〈疫病神〉の五人組は色鮮やかに描かれていて愉しい。

《河童たち》の伝承も実にさまざま。二、三歳くらいの子どもの姿をした〈せこ〉、奄美大島のガジュマルの林に棲んでいる〈けんもん〉、川べりに二人並んで物語りなどを話しているだけの〈川男〉などなどバリエーションに富んでいる。

 妖怪たちのなかでとくに興味深く感じたのは、人間に悪さをしないものも少なからずいるということだ。水が川下の村にも流れるように水門を勝手にあける〈赤舌〉は農村における和平の調停者のような気もするし、可愛い姿で登場する〈倉ぼっこ〉は倉を守ってくれる存在。アイヌ語で「ふきの下に住む人」という意味の〈コロボックル〉も気立てが良く、人に対して何のいたずらもしない。

《憑きもの》の世界もおもしろい。鉦から手足が生えた〈鉦五郎〉の項目では大阪の淀屋辰五郎にまつわる伝説が紹介されている。〈化け草履〉には「履物を粗末にするな」という警句がこめられているのだろう。

「“あの世”のことでも明るい気持ちで語れる時代がくれば面白いと思っている」と水木はあとがき風の文章のなかで述べている。なるほど本シリーズではそのような思いがみごとに具現化されているように思う。
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by syunpo | 2015-12-13 10:18 | 文化人類学・民俗学 | Comments(0)
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