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おまかせ民主主義を超えるための〜『上野千鶴子の選憲論』

●上野千鶴子著『上野千鶴子の選憲論』/集英社/2014年4月発行

b0072887_2117768.jpg 社会学者の上野千鶴子による憲法論。横浜弁護士会・日本弁護士連合会主催の憲法問題シンポジウムで行なわれた講演記録がベースになっている。前半は自民党改憲案に対する批判的論評、後半では改憲論に対抗するために打ち出した選憲論が展開されている。

 本書にいう選憲論とは「現在ある憲法をもう一度選びなおしましょうという提案」である。ただし現行憲法にまったく手をつけず是非のみを国民に問うというわけでもない。選憲の過程でどんな憲法がほしいのか議論することを提起しているのだ。

 いろいろな提案を議論し、検討したあとで、意思決定の手続きにかけて、もし新憲法が成立したら、それは「国民の総意」となるでしょう。もしそうならなければ……?
 結果は、国民は現行憲法を「選びなおした」ことになります。(p155)


 上野はこのあと「憲法九条を守りたいあまり、憲法論議そのものを封印する態度は感心しません。これでは変化を『静かに起こそう』という『ナチスの手口に学べ』の改憲派と変わりません」と述べている。このような選憲論には、改憲論の一種でありストレートに改正案を出すべき、という護憲派からの皮肉めいた声もあるようだが、傾聴に値する意見ではあるだろう。

 ちなみに選憲論は特段に新しい考えではない。本文中にも言及があるように加藤典洋が一九九七年刊行の『敗戦後論』で提起しているし、同じ趣旨のことはかつて一水会の鈴木邦男も主張していたように記憶する。イデオロギーの左右や保革に関係なく選憲論を主張する論者が存在するというのは興味深い事実である。
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by syunpo | 2016-05-14 21:21 | 憲法・司法 | Trackback | Comments(0)
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