●又吉直樹、堀本裕樹著『芸人と俳人』/集英社/2015年5月発行
又吉直樹と堀本裕樹の対談形式による俳句の入門書とでもいうべき本。雑誌「すばる」に連載されたものがベースになっている。又吉が知ったかぶりをせず素朴に直截に疑問をぶつけ、それに堀本が丁寧に答えていく。定型句の基礎解説に始まり、作句、選句、句会、吟行と回を重ねていくうちに又吉が俳句に対する「怖さ」を解消していき、読者も同じように俳句について楽しく学べてしまう、という趣旨である。 実際、俳句にさほど詳しくない私としては勉強になることが少なからずあった。歳時記と友達になれという実践的な助言をはじめ、俳句の立ち姿を凛とさせる切字に関する解説などは俳句を読むだけの人にも示唆的だろう。また「季語」という用語はそんなに古いものではないというのも一つの学びだった。江戸時代には「四季の詞」と言われていたものを、明治四一年に俳人の大須賀乙字が季語と呼び始めたのだという。 句会の様子がとりわけおもしろい。又吉、堀本のほかに、中江有里、穂村弘、藤野可織が参加して、和気あいあいとしたなかにも批判的な感想を交えた選評はそれなりに刺激的でもある。 また二人で鎌倉に吟行した記録も収められていて、こちらも愉しい。又吉が詠んだ「蟻進み参拝後だと悟りけり」を堀本が「参拝を終へたる蟻かすれ違ふ」と添削しているのはなるほどと思った。
by syunpo
| 2016-06-15 21:26
| 文学(詩・詩論)
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