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国家の失敗を解決する道筋〜『憲法という希望』

●木村草太著『憲法という希望』/講談社/2016年9月発行

b0072887_20122387.jpg 憲法学の対象は一般に「人権論」と「統治機構論」の二つに大きく分かれているらしい。これは立憲主義の目的が人権保障と権力分立に分類されるのに応じたものである。本書では、前者のケーススタディとして婚外子の相続差別や夫婦別姓訴訟、後者では辺野古基地建設の問題をそれぞれ憲法学の観点から考察する。その前段に立憲主義の概説がおかれ、後半には国谷裕子との対談が収録されている。

 夫婦別姓を認めない現行制度の問題は、女性差別ではなく「同性になることを許容するカップル」と「同姓になることを許容しないカップル」との間の不平等にある、という木村の見解にはなるほどと思う。その見地から二〇一五年の合憲判決に一定の理解を示しているのも理屈としては一応筋が通っている。逆にいえば、アプローチ次第では違憲判決を引き出せる可能性があるということだ。
 国谷はその点を捉えて「とても不思議ですね。夫婦の同姓を定める民法七五〇条の規定が、ある闘い方をすれば合憲と言われ、また違う闘い方をすれば違憲という判決を引き出せたかもしれない」と疑義を呈するのだが、木村は次のように応じている。

「法律構成」と言われる分野ですが、まったく同じ事件でも、法律の主張の仕方が変わるだけでまったく結論が変わるというのはよくあることなのですね。弁護士がプロフェッションとして頑張らないといけないのは、まさに法律構成です。(p125)

 辺野古基地建設をめぐっては、憲法四一条、九二条、九五条を引いて、立法や地方自治の本旨、住民投票の観点から「木村理論」を提起しているのが注目されるだろう。これは米軍基地の場所を閣議決定だけで決めてしまうのは、以上の条項に違反するというものである。その解決策として、木村は以下のような手続きを提案する。すなわち基地建設は国政の重要事項であるから法律によって決められるべきであり、それは特定の地方の自治権を制限するのであるから地方自治の本旨に沿った手続きが求められる、そのためには当該自治体の住民投票で過半数の賛成を得ることが必要、というものである。

 本書は大阪弁護士会主催の講演会記録をベースにしているので語り口は平易。ボリューム的に不足している分を憲法全文や本文に関連する国会質疑を巻末に収めて、何とか一冊の本に仕立てあげたというところか。やや薄味な読後感を拭えないものの、木村憲法学の面白味の一端は伝わってきた。
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by syunpo | 2016-10-03 20:13 | 憲法・司法 | Trackback | Comments(0)
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