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ブックラバー宣言

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大作家が自費出版で出した俳句の本〜『句集ひとり』

●瀬戸内寂聴著『句集ひとり』/深夜叢書社/2017年5月発行

b0072887_18364579.jpg 作家の瀬戸内寂聴が九十五歳にして初めて出した句集。「死んだ時、ごく親しい人だけに見てもらえればいい」ということで自費出版されたものらしいが、めでたく第六回星野立子賞を受賞した。

 巻末には俳句と関係の深い人々との交遊録的なエッセイが併録されていて、瀬戸内と俳句との関わりに関する舞台裏をも知ることができるという構成である。

 ちなみに句集の題は一遍上人の言葉を意識したものという。
「生ぜしもひとりなり/死するもひとりなり/されば人とともに住すれども/ひとりなり/添いはつべき人/なきゆえなり」

 生ぜしも死するもひとり柚子湯かな
 はるさめかなみだかあてなにじみをり
 子を捨てしわれに母の日喪のごとく
 寂庵に誰のひとすぢ木の葉髪
 湯豆腐や天変地異は鍋の外


 自由に生きてきたひとりの文学者の矜持や孤独が、小さな文字の宇宙のなかに畳み込まれている。そこから聞こえてくるのは、ことばとともに生きてきた人の歌い語る声であり、また生命ある者の幽かな鼓動でもあるのかもしれない。
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by syunpo | 2018-05-09 18:40 | 文学(詩・詩論) | Comments(0)
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