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ブックラバー宣言

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テイストの違いを味わう〜『短歌と俳句の五十番勝負』

●穂村弘、堀本裕樹著『短歌と俳句の五十番勝負』/新潮社/2018年4月発行

b0072887_21585923.jpg 五十人にお題を出してもらい、歌人・穂村弘と俳人・堀本裕樹が作品をつくる、文字どおり短歌と俳句の真剣勝負。「短歌的感情」と「俳句的思索」を読み比べる面白味に加えて、作品ごとに短いエッセイが付けられていてなかなか愉しい趣向だ。新潮社の読書情報誌〈波〉に連載された企画を書籍化したものである。

 荒木経惟の出したお題は「挿入」。ビートたけしは「夢精」、柳家喬太郎が「舞台」と、いかにもその人らしいもの。かと思えば、壇蜜が「安普請」という意表をついたお題で二人を驚かせているのも一興。

 安普請の床を鳴らして恋人が銀河革命体操をする(穂村弘)

 鎌風の抜け道のある安普請(堀本裕樹)


 穂村の歌に登場する「恋人」は大学時代に付き合っていた年上の女性をイメージしたものらしく、部屋のなかでストレッチングを教えてもらったりしたのだとか。銀河革命体操という跳んだ表現がおもしろい。堀本の句にでてくる「鎌風」は鎌鼬(かまいたち)のことで、冬の季語。

 迫田朋子が出したお題はジャーナリストらしく今風に「忖度」。

「忖度」とひとこと云ってねむりこむ悟空を抱いて浮かぶ筋斗雲(穂村弘)

 忖度をし合ひ差しあふ冷酒かな(堀本裕樹)


 堀本の句は、私のような素人にはさっと一読しただけでは意味がわからないものが多い。解説のエッセイを読んでなるほどと合点がいくという次第。でも素人的にはそうした過程もまた定型詩を読む愉しさといえようか。

 作品を並べることで、二つのジャンルの表現力の違いだけでなく両者の対照的な持ち味がいっそう際立つようにも感じられた。造語などでちょっとズレた独特の世界観を表現する穂村の作風に対して、堀本には「古風」なテイストを感じさせるところがある。なお巻末には二人の対談が収録されている。
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by syunpo | 2018-06-20 22:01 | 文学(詩・詩論) | Comments(0)
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