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自然を自然の眼を通して見る〜『イサム・ノグチ エッセイ』

●イサム・ノグチ著『イサム・ノグチ エッセイ』(北代美和子訳)/みすず書房/2018年4月発行

b0072887_18341177.jpg イサム・ノグチはアメリカ人を母、日本人を父としてロサンジェルスに生まれ、彫刻家として活躍した。いや活躍の場は彫刻にとどまらなかった。舞台芸術、陶芸、家具デザイン、庭園設計、空間設計など幅広いジャンルで創作活動を展開したことで知られている。

 私がよく足を運ぶ大阪・国立国際美術館でもノグチの《黒い太陽》《雨の山》などが所蔵されていて、ノグチの作品には折りに触れて接してきたが、彼の人となりや芸術に対する考え方をよく知悉しているわけではなかった。
 本書はノグチのエッセイとインタビューから構成されている。訳者によれば「優れた文章を書く名文家」でもあったらしい。

 冒頭に掲げられた《グッゲンハイム奨学金申請書》と題された一文にノグチの彫刻観ひいては芸術観が簡潔に表明されているように思われる。

 私は自然を自然の眼を通して見たい、そして特別な崇拝の対象としての人間を無視したい。これまでに考えられたこともない美の高みがあるにちがいなく、この態度の反転によって彫刻はその高みにまでもちあげられるだろう。(p8)

 こうした考えが基本にあったからこそ庭園や空間設計の分野にまで仕事の場を広げたともいえるかもしれない。

 ノグチがデザインした照明器具 “AKARI” は今でも日本で販売されているが、岐阜で提灯作りを見学したことなど、その裏話を披瀝しているのも面白い。いわく「半透明で折りたたみ可能な光の彫刻!」。

 また、庭園とランドスケープに関する考察や舞踏家マーサ・グレアムとのコラボレーションに関する文章など、ノグチの旺盛な知的好奇心を感じさせて興味は尽きない。

 ただし本書の訳文はいささか生硬で読みやすい日本語とは言い難い。「名文」の醍醐味を十全に味わうにはやはり原文に当たるべきなのだろう。
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by syunpo | 2018-08-24 18:35 | 美術 | Comments(0)
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