●金谷治訳注『論語』/岩波書店(岩波文庫)/1999年11月発行
「子曰、巧言令色、鮮矣仁」。 子の曰わく、巧言令色、鮮なし仁。 先生が言われた、「ことば上手の顔よしでは、ほとんど無いものだよ、仁の徳は」。(巻第一 学而第一) 最近、テレビを観ていると、この言葉をよく思い出す。テレビ局のクルーにマイクをつきつけられてペラペラ良く喋っている人に「仁の徳」を、感じることはめったにない。 近頃のこの手の代表選手は、村上世彰とかいう人物だ。この人の経済行為について、私は否定も肯定もしない。彼の行為が、日本の企業経営に一石を投じるとか投じないとか議論することにも私の関心はない。 ただ、端的に彼を嫌いなだけだ。それは、生理的嫌悪に近い。強いて言葉にすれば、彼のトークに「仁の徳」が感じられないという以前に人間としての「ウソ」を感じてしまう、ということにでもなろうか。 忘れもしない、昨年秋、日本の野球ファンが日本シリーズをエンジョイしている、まさにその時に、村上氏が阪神タイガースに介入してきたのだ。本当の阪神ファン・野球ファンならば、野球観戦に没頭するはずなのだ。 そんな時に株を買い占めて、ガチャガチャ、タイガースがどうの球団経営がどうの、と述べ始めた。彼が野球もタイガースも愛していないことは、明白である。ならば、黙って金儲けに専念すればよろしい。逆にいえば、単なる自分の金儲けだからこそ、いろいろ講釈を垂れたくなるのだろう。それは、周囲を納得させるというよりも自分自身を納得させる喋りのように私には思える。何か世のため企業のために自分は動いているのだと思い込まなければ、大金を稼いでも空しいのだろう。 いずれにせよ、彼の言葉から、私は知的刺激も人間的な共感をも感受することはない。 「子曰、君子喩於義、小人喩於利」。 子の曰わく、君子は義に喩り、小人は利に喩る。(巻第二 里仁第四)
by syunpo
| 2006-05-25 15:35
| 論語
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Comments(2)
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felice_vita at 2006-05-30 20:08
こんにちは!全く同感です。彼の名前が出てくると阪神の調子が悪くなるので、阪急のTOBが始まりまた不安になっています。できればさっさと全て引き払ってシンガポールに一生永住していただきたい。
最近の歳になって、中学校時代に暗誦させられた論語を思い出し、改めてその意味をかみしめるようになりました。
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syunpo at 2006-05-30 20:42
felice_vitaさま、
賛同のお言葉をいただいて安心しています(笑)。村上氏を応援している人も少なくないですからねぇ。 私は、テレビで彼の顔を見るだけで不快になります。 論語は、この記事を書くために無理やり引用したようなものですが(苦笑)、いつもすぐ手の届く所に置いてあって、時々、パラパラめくっては、現代にも当てはまることが多いなぁ、と感心しております。 コメントありがとうございました。
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