●小室等著『人生を肯定するもの、それが音楽』/岩波書店/2004年4月発行
フォークシンガーの小室等がこれまで出会った内外の音楽家や歌手、影響を受けた人物について語ったものである。登場人物は、谷川俊太郎、渡辺貞夫、オデッタ、ピート・シーガー、坂田明、林英哲、伊藤多喜雄、中村八大、武満徹ら多岐にわたる。 音楽を語る、その語彙がいささか凡庸で「音楽論」としてはあまり面白味を感じなかったが、個々の人物のエピソードや発言などは、それなりに楽しい。 渡辺貞夫が「休符というのはたんなる休みじゃないんだ。休符は演奏しないということじゃない、休符を演奏していなければだめなんだ」と言って、自分が演奏していない時でも他の奏者の演奏に集中することを小室に説いたのに対して、和太鼓奏者の林英哲は「和の音楽はそういうことではない。つねにハッとか、エイヤッといってそのつどはじまる。……つねに新しいはじまりなんだ。前との連続とは限らない」と演奏の途中に〈リセット〉が行なわれうることを主張しているくだりは、なかなか興味深い。 また、武満徹が、幼かった娘(眞樹)と手をつないで、渋谷の街頭で歌をデュエットしながら小室の前を通りすぎっていったのだが、それが後に『女のみち』だと判明した話など、生前の武満のイメージからは想像しがたいもので、面白く読んだ。
by syunpo
| 2007-05-11 19:43
| 音楽
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