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ブックラバー宣言

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辣腕検事から刑事被告人へ〜『反転』

●田中森一著『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』/幻冬舎/2007年6月発行

b0072887_11182787.jpg 著者の田中森一は、大阪地検、東京地検の特捜部で辣腕をふるった元検事。弁護士に転じてアウトローの代理人などとして暗躍、許永中とともに石橋産業事件で詐欺容疑で逮捕・起訴され、東京高裁で実刑判決を受けた人物(現在上告中)である。

 みずからの生い立ちから書き起こし、司法試験に受かるまでの苦労話や検察時代の手柄話、そして弁護士に転じてからの「転落」と「国策逮捕」のありさまが時に生々しく綴られている。結論的にいえば、読み物としてはそれなりに面白いが、全体をとおして茫漠とした読後感しか残らなかった。

 同じように「国策捜査」で辛酸を舐めることになった元検事の三井環や元外交官の佐藤優らに比べると、田中森一は良くも悪くも俗っぽい人間として立ち現れる。それが本書の面白味でもあり、また弱みでもあるように思える。
 何より私自身、この著者に対する共感をおぼえる場面は少なかったし、田中が悪魔的な魅力を感じていたらしい山口組幹部や許永中についても、本書の描写からその魅力の片鱗を感受することは困難であった。

 ここには、表社会のエスタブリッシュメントと裏社会の猛者たちとの交流や接点がいくつも語られている。それらの挿話に触れれば、日本社会の成り立ちが一筋縄ではいかないことをあらためて認識させられる。そこから、どのような教訓や結論を引き出すかは、読者の関心の在り処によって違ったものになるだろう。
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by syunpo | 2007-09-22 11:22 | ノンフィクション | Comments(2)
Commented by go_n_ta at 2007-09-25 11:39
私の読後感は、「司法試験に受かるってこの程度のこと」でした。難関と言われていた時代でもこれです。裁判官・検察官・弁護士には、勘違いしている人が多いです^^
いわゆる「ヤメ検」には懲戒処分を受ける人が多いのですが、転落のプロセスがよく分かります。いずれにせよ、いろんな読み方ができる本です。
田中先生、今何故、この本を書いたのでしょうか。その動機・目的が一番の関心事です。
Commented by syunpo at 2007-09-25 18:48
go_n_taさま、
この本は、刊行直後から話題になっていたうえ、go_n_taさまのブログでも取り上げておられたことが本書を手にとる大きな契機となりました。

「司法試験に受かるってこの程度のこと」というのは、現実に難関を突破して法曹界に身をおいておられるからこそいえる御感想、私としては迂闊に同意できる立場にありませんが(苦笑)、「ヤメ検」弁護士がいろいろな意味で最近やたら目立つようになったことには少し違和感を覚えることはあります。

この内容で、このタイミングでの出版、たしかに狙いがイマイチわかりません。内容的には「ごった煮」のような感じで、みずからの「無実」を訴えたい、という趣旨だけでもなさそうですし……。
幻冬舎という出版社は、『13歳のハローワーク』とか『陰日向に咲く』とか『紀香魂』とかセールス上手な出版社だなぁ、とはいつも思っていますが(笑)。
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