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ブックラバー宣言

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二一世紀の瓦版として〜『新聞社』

●河内孝著『新聞社 破綻したビジネスモデル』/新潮社/2007年3月発行

b0072887_10225358.jpg 本書は、新聞業界が抱える構造的な問題点をあぶりだし、そのあるべき将来像について考察するものである。著者は毎日新聞で常務取締役(営業・総合メディア担当)を務め、二〇〇六年に退任した。業界に長く生きてきた著者ならではの具体的な記述に富み、メディア産業論としては出色の書物ではないかと思う。

 新聞ビジネスの「破綻」は、近年のIT革命などとは関係なく、業界内ではすでに昔から表面化していたーーこれが本書の主張するところである。
 業界に歪みをもたらしている大きな問題として、著者は主に「部数至上主義」による過当な販売競争と新聞社とテレビ局の資本の一体化に起因するメディア界の閉鎖性の二点を挙げて詳説している。

 新聞の野蛮な拡販競争については、多くの読者が体感していることだろう。
 発行本社が販売店に対して行なう「押し紙」などの強引な手法と、それと引き換えに様々な補助金で販売店に便宜をはかっている現状など、新聞・テレビでは決して報じられることのない舞台裏の詳細が具体的に記述されている。
 また、再販制度と特殊指定という特権を享受しながら、現実には禁じられているはずの値引き販売などを事実上公然と行なっていたり、拡販にあたって裏社会と関係してきたことにも言及されていて、その率直な筆致は終始揺らぐことはない。

 また、「マスメディア集中排除原則」が成文化されると同時に空文化していた、という指摘も本書の要点の一つだ。
 新聞=テレビのコングロマリット化により、新聞とテレビの相互批判が期待できない構造になってしまったことを河内は批判的に論じている。それは、メディア企業と政治家・官僚と利害の一致したメディア版政官業の癒着そのものであった。
 言論活動と企業活動の埋めがたいギャップこそが、今日の新聞不信の根源にあるものではないか、という河内の認識には誰も異存はあるまい。

 ただし、これでもかこれでもかと業界の構造的な歪みや欠陥を指摘したあとに示される新聞の再生ビジョンが、妙にリアルなようなリアルでないような第三極を作るための業務提携、さらには前半の主題と直接関連しないIT社会におけるサバイバルの方策……とややちぐはぐな提案に終わっているのが残念。
 とりわけ、新聞の将来モデルとして「多品種、少量、安価」な専門的Eペーパーを多数創刊して個々の読者の細かなニーズに対応せよとの提案には今一つ説得力を感じることはできなかった。評判の悪い記者クラブ制度を活用して官庁ベースの専門紙を例示している点など、いかにも大手新聞の発想から抜けきれない冴えないアイデアのような気がする。

 何はともあれ、何かと理念倒れになりがちな凡百のジャーナリズム論とはちがい、新聞を産業としての観点から直視し、問題点をうきぼりにした本書の意義は大いに評価に値しよう。
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by syunpo | 2007-10-09 10:29 | メディア論 | Comments(0)
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