●姜尚中、小森陽一著『戦後日本は戦争をしてきた』/角川書店/2007年11月発行
政治学・政治思想史を専門とする姜尚中と日本近代文学を専攻する小森陽一の対論をまとめたものである。二〇〇六年から二〇〇七年にかけて行なわれた四つの対談が収録されている。時局に即した話題にふれつつも、戦前戦後の日本社会の歩みを踏まえたうえでの発言が基調をなしている。とりわけ朝鮮半島の問題に関しては、朝鮮戦争が未だ休戦協定の段階にあること(戦争が継続中であること)が強調され、名実ともに戦争を終結させることを視野に入れながらの提言に本書のメッセージが凝縮されているように思われる。 あえて異論を記すと、小森が現在の病理的な現象を語る際に、持論の展開にあわせるような強引な「解釈」をほどこしている点が少し気になった。 たとえば、自殺の増加に関して「自死のイデオロギー」という語句を使いながら「自死の責任論という、近代日本の天皇制が作り出してきた、死んで責任を取るということが、愛国心に染みついているのではないか」(p138)というようなくだりだ。大日本帝国の兵隊さんの自決じゃあるまいに、いくらなんでも、平成の世におけるあまたの自殺と天皇制とを結びつけるのは無理がありすぎ。厳密な社会科学的言説を求められるわけではない文学者だからって、こういう大雑把かつ教条主義的な発言をしているとバカにされるだけです。
by syunpo
| 2007-11-20 18:28
| 政治
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