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ブックラバー宣言

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内部告発の前に読む本〜『内部告発と公益通報』

●櫻井稔著『内部告発と公益通報』/中央公論新社/2006年3月発行

b0072887_1044356.jpg 官民を問わず組織の不法行為が内部告発によって明るみにでることが増えてきた。そうした世情を反映して、二〇〇六年四月には公益通報者保護法が施行された。これは基本的に公益通報者の保護をはかるとともに、組織のコンプライアンスを促進するものとして位置づけられている。
 本書は、主にこの法律に基づいて内部告発や公益通報にまつわる問題を整理したものである。著者は、労働基準監督官として長らく旧労働省に勤務し、現在は人事コンサルティング企業の代表を務める人物。

 企業や組織との雇用関係において守秘義務や誠実義務を負う雇用者にとって、内部告発という行為に打って出ることは、おのずと矛盾を孕んだものとなる。そのために様々な混乱やリスクもつきまとう。ピーター・ドラッカーやミルトン・フリードマンなどは内部告発に批判的な姿勢を示していたらしい。そこで著者は、公益通報者保護法の条文に則って、内部告発に関する問題点を具体的に検証し、同法が社会に与える影響を考察した。

 どのような不正が通報の対象になるのか。いかなる公益通報が保護の対象になるのか。「内部通報」「行政機関通報」「企業外通報(マスコミ等への通報)」には、それぞれどのような法的縛りがあり、どう違うのか……等々、著者は丁寧に解説していく。
 また、同法の不充分な点として、脱税や政治資金規正法違反の事案が通報者保護の対象になっていないこと、通報者に取引業者が含まれないことなどを挙げている。

 いかにも元公務員らしい生真面目な筆致で、教科書風の記述が少々カッタルさを感じさせるものの、内部告発をめぐる諸問題を理解する一助にはなるだろう。とりわけこれから内部告発しようとしている者には有益な本かもしれない。

 ついでに記しておくと、最終章の「コンプライアンスと日本の法律」は、現実と乖離していてハナから守れない法律を量産してきた日本の法体系全般の問題点を指摘していて、重要な問題提起であることは否定しないが、本書の趣旨からすれば完全な蛇足である。記述内容も極めて雑駁なもので、突然、人が変わったように「義憤」社会を糾弾する様子には些か奇異な印象を受けた。
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by syunpo | 2007-12-01 10:45 | 社会全般 | Comments(0)
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