●堤未果著『ルポ貧困大国アメリカ』/岩波書店/2008年1月発行
米国の新自由主義的政策が深刻化させた経済格差。本書はその諸相を医療現場、教育現場、戦場などにおいてみていくものである。 貧困が生みだす肥満、ハリケーン・カトリーナにみる災害対策民営化による人災、公的医療の貧困がもたらす医療難民、教育予算削減に苦しむ若者たち、世界の貧困層をターゲットにする戦争の民営化……そうした米国の病理的現象が具体的にレポートされていて、私は今さらながらに彼の国の確信犯的悪政に愕然とさせられた。 しかも、中間層を下層に零落させた後に軍がそのゾーンから有無を言わせず人材のリクルートを図るという循環構造は、軍事=貧困大国の現状を象徴する悪夢の輪のように思える。いや、そうした構造は米国内にとどまらず地球規模に拡散しているのだ。 無論、これは遠い外国の話ではない。日本においても小泉ー安倍政権によって推進された民営化路線は、すでにあちこちでその歪みを顕在化させている。「これからの社会福祉は市場で購入するもの」と公言する厚生労働省官僚も現れたらしい。幸か不幸か福田政権は中途半端な姿勢を示しているが、続編『貧困大国ニッポン』が刊行されるような事態を招かぬよう私たちは意識を高めていくしかない。
by syunpo
| 2008-03-13 18:57
| ノンフィクション
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Comments(2)
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go_n_ta at 2008-03-14 10:24
良かれ悪しかれ、日本のお手本。いや一蓮托生の属国扱いですから、このままほっとけば51番目の州になる日も近い。そうなると我らも晴れて貧困大国の一員です。
この国、WASPだけが大切で、Negroid・Hispanic・Asianに対する奥深い差別観念があるように思えます。これはDNAのレベルで決まっているので変更不可。 日本は、アジア・ユーロ・アフリカとの多チャンネルを確保しておかないと、大変なことになりそうです。
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syunpo at 2008-03-14 17:50
go_n_taさま、
>一蓮托生の属国…… ……わが方にも忠犬ポチ公をみずから望む者が未だ散見されますね。アングロサクソンと仲良くやっておけば万事安泰、とか述べている思考停止状態のウルトラ・ワンパターン言説をつい最近も新聞で見かけました。 これから国際社会で生きていくには「多チャンネル」を確保して、国際関係上のリスクを分散することに知恵をしぼる以外にないと私も思います。 それから、医療や介護の分野を「産業化」せよ、という主張は今でもよく聞かれますが、市場原理でうまく回していける可能性があるのは、生命とは直接関係のない美容整形のような付加価値的な分野くらいだと思われます。小泉・安倍政権の周辺でウロウロしていた御用学者の唱える市場万能主義の行き着く先がどういうものか、その回答は本書に充分に記述されているのではないでしょうか。
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