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ブックラバー宣言

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私たちの意識に〜『風穴をあける』

●谷川俊太郎著『風穴をあける』/草思社/2002年1月発行

b0072887_18473553.jpg 思えば、谷川俊太郎の散文を集めた本をこれまで読んだことがなかった。いや、ずいぶん昔に読んだのかもしれないが、少なくとも今私の手元に残っている本はない。
 ここには、一九八五年から二〇〇一年までの間に記された文章が収められていて、「読む・書く」ことをめぐる随想文と、交友のあった人物の批評的な文章とに括られている。全編をとおして谷川の詩や言葉、芸術に対する考え方がよく表れた一冊といえよう。

 とりわけ、書名に採用された〈風穴をあける〉という短文の次の一節に谷川の詩観が端的に表現されている。

 詩には歌も絵も理屈もばかばかしさも内蔵されているんだ。そして言葉にならない「詩」は、私たちの心の深みに、そして日々の生活のいたるところにひそんでいる。詩は地球上のさまざな言語の違いさえ超えて、私たちの意識に風穴をあけてくれるものだと思う。そこに吹く風はこの世とあの世をむずぶ風かもしれない。(p97)

 このほか、武満徹や寺山修司、和田夏十らを回顧するクリティカルなエッセイは、やや感傷的な色合いを帯びつつもそれ故に彼らへの深い想いが伝わってきたし、池田澄子や金関寿夫など私のよく知らない歌人・詩人に触れた文章にも関心をおぼえた。
 なお、本書は二〇〇六年に角川書店により文庫化されている。
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by syunpo | 2008-05-26 19:07 | 文学(詩・詩論) | Comments(0)
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