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ブックラバー宣言

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気宇壮大のススメ〜『妄想人生』

●島田雅彦著『妄想人生』/毎日新聞社/2005年9月発行

b0072887_184123.jpg やたら「気宇壮大」という言葉が出てくると思ったら、初出の週刊誌での連載タイトルが〈気宇壮大のススメ〉だったらしい。なるほど昨今の日本社会を見わたせば「気宇壮大」の心性が欠けていると思うことはしばしばである。iPodのようなデジタルオーディオ・メディアから携帯端末、果ては特殊法人から政府のサイズまで、何かと「小さい」ものが尊ばれる風であるし、何より現代人の言動にみえる萎縮ぶりやこぢんまりとしたまとまり方を見聞していると、せめて心がまえくらいは「気宇壮大」でいこうと呼びかけたくなる島田雅彦の気持ちは大いに共感できるというものだ。

 コロンブスや徐福らの歴史的逸話・伝説から作家的妄想を膨らませる話や、チベットでの登山体験に煩悩から解放される術を見出す一文など、たしかに「気宇壮大」で面白く読んだ。
 もっとも終始一貫して「気宇壮大」を説いているわけではもちろんなく、自作を酷評した批評家福田和也への反駁や米国ブッシュ政権への正論的な批判なども盛り込まれていて、内容は種々雑多。ネタに困って無理やりひり出したような凡庸な文章も混じってはいるものの、国家論・文学論から下ネタまで良くも悪くも島田の特色がにじみ出たエッセイ集である。
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by syunpo | 2008-06-15 18:43 | 文学(小説・批評) | Comments(0)
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