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ブックラバー宣言

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キシャクラブの開放を!〜『ジャーナリズム崩壊』

●上杉隆著『ジャーナリズム崩壊』/幻冬舎/2008年7月発行

b0072887_19394385.jpg 安倍政権の舞台裏を描いた『官邸崩壊』に続く著者の「崩壊」シリーズ(!?)第二弾ともいうべき本である。今回標的になったのは、ジャーナリズム。なかでも以前から日本独自の問題点として糾弾され続けてきた記者クラブ制度が槍玉にあげられている。ここでの論点に特に目新しさはないものの、大手メディアが記者クラブ制度という既得権益の維持に如何に血眼になっているか、具体的な事実を積み上げながら批判していく筆致には、やはり格別の説得力が宿っているといっていいだろう。

 記者クラブの存在が公権力との癒着の温床になってきただけでなく、クラブに属さない雑誌記者やフリージャーナリスト、海外メディアの特派員たちの取材を意図的に妨害しているという事実には何とも暗澹たる気持ちにさせられる。
 たとえば、ニューヨーク・タイムズの東京支局長が小渕恵三政権当時、首相への単独会見を申し込んだ際、「内閣記者会(内閣の記者クラブ)の了承を取りつけてほしい」といわれ、案の定了承を得られずインタビューを断念したという事実。
 石原慎太郎東京都知事が閉鎖的な記者クラブ制度に対抗するため、定例会見とは別に記者クラブに属さないジャーナリスト向けに知事主催の会見を開いていたことがあったのだが、情報の独占体制を崩される懸念を感じた記者クラブ側がいろいろと横やりを入れて中止に追い込んだという事実。
 ……これらの挿話を読むと、新聞社やテレビ局の記者連中に「取材・報道の自由」を叫ぶ資格のないことがよく理解できる。

 このほか、報道と経営の区別がつけられていない新聞社の悪弊、ネタ元を明確にしない新聞のアンフェアな慣習、政治家の推薦状が飛びかうNHKの採用試験……などなど日本の大手メディアの異様な慣習や実態があぶりだされて批判の種は尽きない、といった趣である。

 文章がいささか未整理で論点が行きつ戻りつする構成に推敲の不足を感じたのと、海外とりわけ米国メディアを無批判に比較対象としている点などが少し引っ掛かったが、本書の評価に大きな瑕疵となるものではない。
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by syunpo | 2008-09-14 19:56 | メディア論 | Comments(0)
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