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ブックラバー宣言

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公共の利益と組織の狭間で〜『ルポ内部告発』

●奥山俊宏、村山治、横山蔵利著『ルポ内部告発』/朝日新聞出版/2008年9月発行

b0072887_10495441.jpg 昨今、組織の不正行為が内部告発によって明るみになるケースが増えてきた。本書は、朝日新聞記者による「内部告発」に関するルポルタージュである。内部告発した人、内部告発された組織の両面からその実態が報告されている。

 俎上に乗せられているのは、三菱自動車の欠陥車隠し、ミートホープ社、船場吉兆などの食品偽装、バブル期の千代田生命の杜撰な経営をめぐる内部告発や、大阪市など地方自治体でのコンプライアンスの取り組み……などなど。
 なかでも、検察庁の裏金問題を告発して逮捕され実刑をくらった三井環のケース、トナミ運輸で違法行為を告発し続けて、会社から報復にあいながらも定年まで勤めあげた「内部告発のパイオニア」ともいえる元社員の事例などは章を独立させて紙幅を割いており、興味深く読んだ。

 ただ、本書は新聞記事をベースにしたものが中心で、全般に皮相的な記述にとどまっている。たとえば、大阪トヨタ自動車で会社の不正を通報窓口の弁護士に通報した結果、その社員が「報復」的に自宅待機を命じられた一件については、当事者に通り一遍の取材をして言い分をそのまま文字にしただけという印象を拭いがたい。最終的には弁護士一個人の不始末とでもいいたげなまとめ方で、トヨタの企業体質にはほとんどメスが入らず消化不良の感が残った。

 いろいろ話題を詰め込んだはいいけれど、本にするからには初出の記事からさらにもう一歩も二歩も踏み込んだ取材と分析が必要ではないかと思う。
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by syunpo | 2008-10-14 10:52 | ノンフィクション | Comments(0)
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