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ブックラバー宣言

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2018年 01月 03日 ( 1 )

「世の中をよくする」ための提言〜『不安な個人、立ちすくむ国家』

●経済産業省若手プロジェクト著『不安な個人、立ちすくむ国家』/文藝春秋/2017年11月発行

b0072887_1258254.jpg 経済産業省の次官・若手プロジェクトが二〇一七年五月に公開したレポート〈不安な個人、立ちすくむ国家〜モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか〜〉はネットを中心にたいへんな反響を呼んだらしい。本書はそのレポートをもとに、三人の有識者を迎え座談会を行ない、あわせてプロジェクトのメンバー六人のインタビューを収録して書籍化したものである。

 レポートでは「ある年齢で区切って一律に『高齢者=弱者』として扱い、個人に十分な選択の機会が与えられていない」ことを批判的に指摘し、母子家庭やこどもの貧困を「自己責任」と断じる風潮に警鐘を鳴らしている。また「勤労世代が高齢者を支えるという」考え方から「子どもを大人が支える」という考え方への転換を提案しているのも興味深い。

 ただ、このレポートをもとに交わした三つの座談は全然おもしろくない。養老孟司、冨山和彦、東浩紀という顔ぶれをみればおおよその察しはつくというものだが、本にするならもう少し相手を選んだ方がよかっただろう。

 またシルバー民主主義への懐疑や社会保障の基本的な考え方など経産省が直接所掌していない問題についての提起はそれなりに踏み込んだものだが、原発など批判の多い電力問題についてはレポートのなかではまったく触れられていない。電力の供給をどうするか、今後も核廃棄物を出し続けるのか、という問題は日本の将来にとって最重要課題の一つだと思うのだが。厳しい自己批判を迫られるような所管の難題については俎上にのせるのを周到に回避したという印象である。

 ともあれ経産省というエリート官庁の若手官僚の問題意識を知ることができるという点では興味深い本といえる。
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by syunpo | 2018-01-03 12:59 | 政治 | Trackback | Comments(0)