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ブックラバー宣言

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2018年 09月 02日 ( 1 )

人類の先を歩んだ革命家!?〜『カストロとゲバラ』

●広瀬隆著『カストロとゲバラ』/集英社インターナショナル/2018年2月発行

b0072887_9564353.jpg フィデル・カストロとチェ・ゲバラ。キューバ革命を牽引した両雄である。ラテンアメリカ諸国は二〇世紀の大国である米国の圧政を受けて苦しめられてきた。本書で強調されているのは、そうした歴史における「苦しめた側の人間の実名と、圧政の利権メカニズム」に関する解析だ。その点に言及した書籍があまりに少ないと広瀬はいう。そこで〈強欲なアメリカ資本〉対〈キューバの民族主義〉というわかりやすい対立図式をベースに一連の革命を素描していくのである。

 中南米における米国の帝国主義的なあり方を徹底的に糾弾する筆致は痛快である。私も大いに共感する。ただそれにしても、全体を通して「圧政の利権メカニズム」を強調するあまりキューバ革命を美化しすぎているのではないかとの印象もまた拭い難い。あらゆる革命が反動を抑えるために独裁化するのは宿命のようなものだが、外部からいかなる干渉があろうとも、史実を冷静に直視することは著述家に不可欠の態度ではないか。

 けれども広瀬は「人類の先を歩む進歩した人間社会」(カストロ)を目指すものとして、キューバの社会主義に最大限の賛辞をおくっているのだ。

 人間社会を正当に評価するためには、政治リーダーやメディアの情報だけでは無理がある。旅行者としての体験も充分な判断材料にはならないだろう。カネを落としてくれる旅行者には優しくても、外部から来た定住者には冷淡な社会など掃いて捨てるほど存在しているのだから。まずはその社会で生活することが必須である。
 しかし広瀬が断定的に評価を与えている根拠は必ずしも本書で充分に提示されているとは思えない。何よりも本当にキューバ革命が「人類の先を歩む」ものであるなら、追随する国家がもっともっと現れてもいいはずなのだが……。
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by syunpo | 2018-09-02 10:00 | 国際関係論 | Comments(0)